はじめに
前回の記事では、大学院生活の折り返し地点で感じていた不安や、徐々に迫ってきた修士論文について書きました。
15,000ワードの修士論文。
当時の私にとっては想像もつかないほどのボリュームで、「本当に完成できるのだろうか」と不安しかありませんでした。
しかし、不安を感じていても修士論文は待ってくれません。
少しずつ研究テーマを決め、実際に研究を進めていく必要があります。
今回は、修士論文のテーマ決定からデータ収集までの過程で経験した苦労について書いていきたいと思います。
何を研究するのか
まず最初に決めなければならないのが研究テーマです。
私はスポーツコーチングを学んでいたため、興味のある分野はいくつかありました。
例えば、
- サッカー指導者の言葉に関する研究
- 若手選手の育成に関する研究
- コーチングに関する研究
などです。
どれも興味深いテーマでしたし、実際に現場経験もあったため取り組んでみたい気持ちがありました。
しかし、ここで一つ問題がありました。
英語です。
私はまだ英語で研究を行うことに慣れておらず、インタビュー調査や質的研究を進める自信がありませんでした。
そこで最終的に選んだのがデータ分析でした。
数字を扱う研究であれば、英語力の影響を多少減らせるのではないかと考えたからです。
今振り返ると、この判断自体は間違っていなかったと思います。
ただし、この選択によって私は別の地獄を見ることになります。
担当教授と連絡が取れない
研究テーマを決めると、修士論文の担当教授が割り当てられます。
私にも担当教授が決まりました。
しかし、ここで最初の問題が発生します。
連絡が取れないのです。
メールを送っても返信がありません。
数日待っても返信がありません。
再度送っても返信がありません。
後から聞いた話ですが、その教授は学生の間で「メールを返さないことで有名な教授」でした。
日本でも多少こうしたことはあるかもしれませんが、イギリスでは「またか」と思う出来事が本当に多かったです。
▼過去の記事
結局、何度もメールを送り、友人から直接電話で連絡してもらうことで、ようやく連絡が取れました。
当時は「やっと連絡が取れた」と安心していました。
しかし、この教授の特性は後にさらに大きな問題を生み出すことになります。
この時の私は、まだそのことを知る由もありませんでした。
イングランド・プレミアリーグとJリーグの比較
担当教授との話し合いを経て、研究テーマも決まりました。
テーマは、
「2022-2023シーズンにおけるイングランド・プレミアリーグ上位5チームとJリーグ上位5チームの比較分析」
です。
世界最高峰とも言われるプレミアリーグと、日本のJリーグ。
両リーグにはどのような違いがあるのか。
得点数やシュート数だけでなく、ボール保持率やパス、クロス、さらにはより専門的なデータまで比較し、その特徴を明らかにしようと考えました。
サッカーが好きな私にとっては非常に興味深いテーマでした。
ようやく研究らしいことが始まる。
そんな期待もありました。
統計学という大きな壁
しかし、研究を進める中で私は大きな壁にぶつかります。
統計学です。
データを集めるだけでは研究にはなりません。
そのデータに「明確な違いがある」ことを示すためには統計分析が必要になります。
私は統計学をほとんど学んだことがありませんでした。
日本語で説明されても難しい内容です。
それを英語で理解しなければなりません。
論文を読みながら統計用語を調べる。
YouTubeで解説動画を見る。
分からない部分をまた調べる。
そんな作業を何度も繰り返していました。
結局、私はまず日本語で統計学の基礎を学び、その後に英語で同じ内容を学び直すという方法を取りました。
正直なところ、この頃はサッカーの研究をしているのか、統計学を勉強しているのか分からない状態でした。
まさかのテーマ変更
そして、さらに大きな問題が発生します。
当時、研究で使用するデータは、サッカーの詳細なデータを提供しているデータサイトから取得する予定でした。
ある日、担当教授から突然指示がありました。
「データサイトに連絡して、データの使用許可を取ってください」
私は思いました。
「それ、もっと早く言ってほしかったな……」
すでにデータ収集を始め、論文も少し書き始めていました。
しかし仕方ありません。
私はデータサイトへ連絡を取り、研究目的での利用許可を申請しました。
すると返ってきた回答は予想外のものでした。
プレミアリーグのデータは使用不可。
まさかの結果でした。
テーマの中心となるデータが使えません。
つまり、このままでは研究そのものが成立しません。
ここまで進めてきた作業は、ほぼ無駄になってしまいました。
正直かなりショックでした。
しかし、提出期限は待ってくれません。
私は急遽テーマを変更することになります。
最終的に選んだテーマは、
「2022-2023シーズンにおけるJリーグ上位5チームと下位5チームの比較分析」
でした。
プレミアリーグとの比較はできなくなりましたが、上位チームと下位チームの違いを分析する研究であれば実施できます。
もちろん、ここまで書いた内容や構成の多くは作り直しです。
研究計画も見直し。
論文の構成も修正。
ようやくスタート地点に立ったと思ったら、再び振り出しに戻されたような感覚でした。
最後に
修士論文は、テーマを決めれば順調に進むものだと思っていました。
しかし実際には、担当教授との連絡問題、統計学の壁、データ利用許可の問題など、次々と予想外の出来事が起こりました。
特にテーマ変更は大きな痛手でした。
ここまで積み上げてきた作業の多くをやり直さなければならなかったからです。
ただ、この時の私はまだ知りませんでした。
本当の苦労はここから始まるということを。
次回は、実際に大量のデータ分析や統計処理を進める中で経験した苦労、そして修士論文提出直前に起きた出来事について書いていきたいと思います。
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▼前回の記事はこちら
「迫りくる修士論文と卒業後の進路への不安」
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「修士論文との戦い② 提出前日に起きた奇跡」
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